芹摘姫まとめ顛末記


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2023年4月末日。京都の龍谷ミュージアムで開催されていた「真宗と聖徳太子」展へ行ってきました。そこで、一番の発見は、本證寺本『善光寺如来絵伝』でした。その第四幅の上半分に描かれているのは、芹摘姫説話が7つの場面から描かれているとし、各場面ごとの説明もありました。芹摘姫とは、太子町にある聖徳太子御廟に太子、太子の母とともに葬られているという妃、膳部郎女(かしわでのいらつめ)のことで、叡福寺本『聖徳太子絵伝』にも芹摘姫と太子の出会いのシーンが描かれているのは知っていましたが、こんな沢山の場面で描かれ、ひとつの物語にもなっている絵伝があることを初めて知りました。

私は、展覧会へ行くとたいてい図録を買って帰るので、当然、本證寺本『善光寺如来絵伝』の写真も解説も載ってるだろうと思い、メモもせず帰ったのですが、帰って図録をみると、なんと絵も解説も載っていませんでした。そんな訳で、今度は各場面がどう解説されているのかをキチンとメモに録っておこうと、再び京都へ行くことにしました。

そして、出かける朝、少し早く起きたので、芹摘姫や善光寺如来絵伝など色々なキーワードで検索していると、渡邉信和さんという方の「聖徳太子伝における芹摘姫説話について」って論文がヒットし、ダウンロードできるようなので見てみると、なんと、芹摘姫説話が載る聖徳太子の伝記類や絵伝の一覧と紹介の他、本證寺本『善光寺如来絵伝』の芹摘姫説話の各部分の解説も載っていたのでした。こちらは、展示の七場面より更に細かく十二場面に分けて解説されていました。もうこれがあれば、わざわざ今日出掛けなくてもよくなったのだけど、昼からの関連イベントにも申し込んでいたので、京都へ。

で、ミュージアムで再び絵伝類を鑑賞し、午後のシンポジウムに参加すると、なんと、吉原浩人って先生の資料がすごくて、芹摘姫説話について、初出と成る『聖徳太子内因曼荼羅』に基づいての概略と、その読み下しが丸々載せてくれているのでした。もう、この資料を頂けただけで、京都まで来た甲斐がありました。

さて、文字の資料が手に入ればやっぱり絵の方も欲しくなる。手持ちの聖徳太子関連の図録を調べたが見当たらない。次にネット検索すると、安城市文化財図録Web版ってのがあったのですがWeb用の画像なので詳細に観れない。更に安城市歴史博物館の特別展『ものがたり善光寺如来絵伝』という図録があるらしいことは分かったのだが、大阪府立図書館のネット検索では府下で所蔵する館はないようだし、ネットの古書サイトにも出ていない。こりゃ、安城市まで行くか、名古屋市の愛知県立図書館までいくより他無いかと途方に暮れていた。そんなおり、他の捜し物で府立中央図書館へ出掛けた時、ふと館内の端末機で色々検索してると、『真宗重宝聚英 第3巻 阿弥陀仏絵像 阿弥陀仏木像 善光寺如来絵伝』(同朋舎出版)と言うのがヒットした。それで、書庫から取り出してもらうと、これがビンゴで、大型本に綺麗な写真で納められていた。当然カラーで複写してもらい、ついにGETとなったのでした。

それで、この複写を元に、各場面の解説記事を作ろうと考えたのだけど、先の渡邉信和さんの論文によると、本證寺本『善光寺如来絵伝』の芹摘姫部分は、一箇所を除けば『聖徳太子伝正法輪』の内容に対応するらしい。絵の方は芹を摘む娘が二人描かれているのに対し、『正法輪』の方は芹摘姫だけで記しているとか。そうすると、やはり『聖徳太子伝正法輪』本文も欲しくなる。論文の註には、「東横国文学」第十六号に「慶應義塾図書館蔵『聖徳太子伝正法輪』翻刻並びに解説」(牧野和夫)が収録されているそうで、これも府立のネット検索すると、府内の館ではヒットせず国立国会図書館でヒットした。で、なにやら利用者登録をするとネットで閲覧できるみたいなので、登録し、無事こちらも手に入れる事が出来たのでした。

まあ、いろいろ紆余曲折あって、ようやく芹摘姫説話の紹介ページをまとめられたのですが、それにしても、図書館様々、ネット検索様々で、こうして私のような単なる歴史マニアでも貴重な論文や図様が入手できることに感謝ですね。

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